顕微鏡観察の世界にもデジタル化の潮流は確実に到来しています。脳病変を含むガラス標本(以下、標本)を100万人が別々の場所で観察するとなれば、100万枚の標本と1万台の顕微鏡が必要であり、また、1枚の標本を1台の顕微鏡で観察するとなれば、100万人が一同に会し行列を作ることになります。一方、標本を高精度スキャンしたデジタルデータ(バーチャルスライド;VS)を、インターネット接続可能なサーバに搭載することにより、世界中のパソコンから、あたかも顕微鏡観察をしているような、ユビキタスに閲覧する仕組みを可能とすることができ、このような物理的な困難は容易に打開できることは自明です。
VS技術と情報通信技術の両方の技術革新のメリットを最大限に生かし、神経疾患のデジタル標本アーカイブを作成し公開することにより、標本と人との時空間的な距離を格段に縮めることができると思います。
本財団では、脳神経系の正常解剖や病理像のデジタル情報を搭載した標本アーカイブを主にインターネットを介して紹介し、また、それらの応用や技術的な技術改良について、興味ある人たちや企業、学術団体などと意見交換や討議することにより、さらにユーザビリティの高い情報提供を可能とする社会を実現することを目的とします。
2022年6月吉日
一般社団法人デジタル神経解剖病理フィーラム 理事長 新井信隆